大学チャンネル.com » 特集B » “入りたい大学”へ!就職・資格取得の基礎知識編

“入りたい大学”へ!就職・資格取得の基礎知識編

 大学新卒者の就職内定率は昨春以来、改善傾向を見せている。とはいえ、安定的な雇用に就くことができないまま、就職活動をあきらめてしまう新卒者も少なくないという。
大学選択、大学進学の重要なポイントの一つにもなっている就職と資格取得の基本を知っておきたい。

就職内定率94%ならほぼ全員が就職している?

lockon18_b_img01  2008年を境に下落を続けた4年制大学新卒者の就職内定率は2011年に底を打ち、昨年から上昇に転じた。今年5月に公表された2013年3月の大学卒業者の就職内定率は、前年比0.3ポイント増の93.9%だった(厚生労働省と文部科学省の共同調査。平成24年度「大学等卒業者の就職状況調査」による)。
lockon18_b_img02  「約94%の就職内定率」と聞くと、“大学新卒者の9割以上が就職している”と思いがちだ。しかし、この就職内定率とは、「就職希望者に占める(実際の)就職者の割合」のこと。極端な話、調査対象集団に就職希望者が1人しかおらず、その1人が内定を得た場合、その集団の就職内定率は100%になる。
 同調査によると、2013年3月の大学卒業者全体(就職希望者の他、進学希望者、自営業、家事手伝い等を含む)に占める就職を希望した者の割合(就職希望率)は70.3%。このうちの93.9%が内定を得ているわけだから、(実際の)就職率は約66%ということになる。

医療系の国家資格と理工系学部が人気を集める

 好転の兆しを見せているとはいえ、まだまだ厳しい4年制大学卒業者の就職状況を背景に、就職に結びつきやすい資格取得(できる大学、学部・学科)が注目されている。
 中でも、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士をはじめとした医療系専門職業人に必須の国家資格や、社会福祉士、精神保健福祉士といった福士系の仕事に就くための国家資格、活躍の場が広がっている管理栄養士の国家資格など、生涯にわたって活用可能な手堅い国家資格が人気を集めている。
 来年度もいくつかの大学で新設が予定されている4年制の看護系学部・学科は、この数年急増し、志願者数も増加し続けてきたが、医・歯・薬学部などの医療・看護系学部は、2013年度入試でも前年度より志願者を増やしている。
 一方、理系も注目されている。理工系学部は不況下の就職に強いと言われ、文部科学省の学校基本調査のデータを見ても、2013年4月1日現在の就職内定率は理系(96.2%)が文系(93.4%)を上回っている。近年は、医療系同様に人気が高い。
 毎年マスコミ各社が発表している就職率ランキングなどでも、各種資格取得と関係の強い工業系単科大学、医療・福祉系の大学が多数上位に登場している。昨春から卒業生を送り出している6年制薬学部(を持つ薬科大学)も好調な就職状況から人気を復活させた。 lockon18_b_img03

大学に入っただけでは国家資格を取得できないことも

 2012年~2013年発表の各国家試験の合格率(17頁に掲載)を見ると、最も低い公認会計士(7.5%)から、最も高い助産師(98.1%)まで幅広く分布している状態だ。医療系国家資格の取得が就職につながりやすく、また、医療系の国家試験合格率は比較的高めだ。だからといって、各国家試験受験資格(養成課程を持つ大学をはじめとした教育機関を卒業することなどによる)を得た者全員が合格者になれるわけではないことを忘れないようにしたい。
 今年3月に実施された6年制薬学部初の薬剤師国家試験の合格率は79.1%(新卒者の合格率は83.62%)。前年の88.3%から約9ポイント低下となったが、4年制当時の近年の合格率70%台前半(新卒者が85%程度、既卒者が40%台後半)に比べると高水準を維持している。
 6年制薬学部では国家試験受験資格を得られるまでの修養年限が6年になり、4年次修了までに、5年目以降の実務実習に出るための薬学共用試験というハードルが課される。高い合格率は、その結果とも考えられるが、その一方、各大学の合格率だけでなく、合格者数(と受験者数)もチェックしておきたい。例えば、入学定員300人、新卒受験者100人、合格者98人(新卒合格率98%)などというケースも見られるからだ。
 他の国家試験合格率を見る時も同様だが、高い合格率は、合格水準に達した学生にしか受験資格を与えない(卒業させない)絞り込みの結果ということが少なくない。資格取得を目的に志望大学を選ぶ際、どうしても合格率だけに目を奪われがちだが、それだけで判断してしまうことは危険だ。「入れる大学」がちゃんと「(資格の)とれる大学」なのかを検討した上で、本当に「入りたい大学」なのかを考えてみることは、大学選びの重要なポイントの一つだ。 lockon18_b_img04

その資格を取得するためにかかる費用と年数は?

 国公立大学の授業料は年額53万5,800円(大学ごとに一定の範囲内で増額できる)だが、私立大学の場合は、大学、学部、学科による差が大きい。さらに、授業料以外に必要な施設・設備費や実験・実習費等の金額にも差があり、文系各学部の初年度納付金が120万円程度。理系各学部や芸術系学部では150~180 万円程度で、薬学部が220万円程度。最近、学費値下げを行う私立大学が相次いでいるとはいえ、医学部、歯学部の場合は平均770万円以上となっている。
 そして、医・歯・獣医学部と薬剤師を目指す薬学部は最低限6年間分の学費が必要。また、従来は4年の修業で看護師と保健師、助産師の3つの国家試験の受験資格が取得可能だった看護系は、2011年度から保健師か助産師のどちらかを選択することになった。看護師資格取得後、3つ目の資格取得のために看護系大学院課程(2年制)に進学するケースも少なくない。理工系各学部も大学院進学率が高いことを考えると、就職に強い(とされる)学部系統への進学を希望する場合、入学後の何年間学ぶことになるのか、必要な費用はどれくらいかを概算しておくことは必須だ。

求められている能力を知って社会人基礎力を養う

 現在、大学新卒者のうち、就職を希望して何らかの活動を行った者が約7割、実際に就職できた者は全新卒者の約3分の2で、2割程度は安定した雇用に就いていない。企業の人事採用担当者は学生に対して、「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション能力」などの社会人基礎力(学問で得られる専門知識やスキル以外に「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事をする上で必要な基礎的な能力」として経済産業省が提言)に関わる能力要素の不足を感じているともいわれる。
 変化し続ける社会状況の中で、学生に自分の「やりたいこと」「できること」「しなければならないこと」を見極めさせながら、4年間(あるいは6年間)の人間的成長を促し、確かな社会人基礎力を養成できる場を提供できる大学こそが、「就職に強い大学」として選ばれるのかもしれない。