大学チャンネル.com » 2013年7月1日アップ » 第1回 大学入学前の読書にこそ入学後の飛躍がある!

コラム

河本敏治の本を読め!元気になる知的格納庫

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第1回 大学入学前の読書にこそ入学後の飛躍がある!

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特に文系学部では二極化している大学像

 大学に入ったら何をしたいか――そう問われた時に日本の高校生の多くは「さまざまな人と交流し、豊かな経験を重ね、人間的に成長したい……」と答えがちです(これを読んでいるあなたなら、どう答えますか)。

 しかし、これは世界の高校生の中の少数派の答えです。大学進学を控えた世界の多くの高校生の不安は、大学での勉強についていけるかどうかということで、大学で何をするのかと問えば、それは当然「勉強」ということになります。これが世界のスタンダードです。

 グローバル化が進展する中、日本の大学もまた国際的な競争にさらされています。そういった状況下で、日本の大学、特に文系学部の多くで見られる“ 単位認定の甘さ” が、今、大きな問題となっています。

 以前の大学生のイメージは、授業を適当に受け、サークル活動を楽しみ、アルバイトに精を出す、といったものでした。理系学部に行けば、3年生以降、実験、演習が重なり、そういったのんびりした生活も消えてしまいますが、文系学部は現在、この大学像で大きく二つに分かれる状況になっています。

 一つは「単位認定基準を厳しく設定し、しっかり大学生としての勉強を遂行させる大学・学部」、いま一つは、以前のイメージのままで、「何となく卒業できてしまう大学・学部」です。「勉強せずとも卒業させてくれる」というのが、以前の日本の、特に文系学部には多い悪習でした。

 もちろん何も学ばないまま大学を出てしまっては、就職活動で良好な結果を望むことはできませんし(もちろん勉強だけではダメですが……)、加えて就職以上に、長い人生における大学での探求型の学びは、大きな波及効果を人生や仕事に及ぼしてくれるはずです。

 ゆえに、現代の高校生は必ず前者の大学を選択するべきなのです。語学であれ、専門科目であれ、大学の厳しい環境下でしっかりと勉強した者こそが、評価される価値観が、今、急速に日本社会全体に広がっていることにぜひ目を向けてください。

高校とはまったく異なる大学の勉強の“深さ”とは

 このように書くと、多くの高校生は、「また勉強か」と思うかもしれません。高校の勉強や受験勉強に続いて、「また大学でも勉強か」と。

 しかし、大学の勉強は高校の勉強、受験勉強とはまったく異なります。この点は非常に重要なのですが、大学での勉強は高校までの勉強と比較して圧倒的に“ 深い”のです。良く言えば専門的、さらに大胆に言い換えれば、マニアックなものなのです。この専門性の深さこそが大学教育の醍醐味なのです。

 当然、大学の単位認定基準がゆるければ、いくら専門的であっても“流して”付き合うことが可能です。しかし、基準が厳しくなるとそういう訳にもいきません。自分の選んだ学部・学科・専攻において、自分の選んだテーマにどっぷりとつかり、極めて専門性の高い学びの道を切り開いていかなければなりません。そして、こうなると学部・学科・専攻の選択は気軽にするものではなく、じっくりとリサーチし、意欲と適性を確認しつつ決断するものとなります。

 すなわち、学部選択のミスや事前に思っていたイメージとのずれが大学入学後に生じた場合、単位認定が厳格な大学・学部であるほど、学びへの意欲が危機に陥ってしまうのです。探求への意欲以前に、なぜ自分がこんなところにいるのだと疑問に思ってしまえば、そこから先に一歩も進めなくなってしまうのは当然のことです。

大学と専門学校の学びは何が違っているのか

 では、具体的にどうすればよいか――私はこれから、この連載で「自らの意欲と適性を確認するための攻撃的読書の方法」を皆さんに示すわけですが、その紹介の前に、まずはしっかりと大学での探求の具体像を確認しておかなければなりません。

 まず大学は専門学校とは異なります。その最大の相違点は「語学がすべての大学において必修」だということです。トラベル系などの専門学校には英語の授業がありますが、基本的に語学の授業がないのが専門学校なのです。

 次いで、大学は「専門領域以外の科目も受講(履修)」しなければなりません。法学部に進学しても、文学関連の講座や理系科目の講座(もちろん文系学生にも理解できるように配慮されたものです)も受講しなければなりません。多くの大学生は、この語学と教養系統の講座の単位を、多くの場合1・2 年生のうちに取り、学年が進むにしたがって、学部・学科に沿った専門性の高い講座(講義)が増えてきます。

 さらに、この専門性の高い講座は、その学部に在籍する学生ならば絶対に受講しなければならない必修科目と、この講座群の中からいくつか選択せよという選択必修科目によって構成されています。これらはすべて学部・学科・専攻に寄り添ったものです。

大学での探求型の学びと攻撃的読書の重要性

 そして、この専門科目の核心に、ゼミナール(ゼミ)という演習形式の講義が控えています。このゼミという講義は、自ら探求したいと考えているテーマに近い研究をしている教員の下に数名から十数名の同級生が集まり、主に卒論を書くための研究をする場なのです。高校の授業と異なり、ゼミでは、対話にも重きが置かれます。ゼミ集団は教員を中心に一体感を持ち、ともすると一生の付き合いになることもごく普通のことです。

 1年生からこのゼミを設定する大学も近年は増える一方で、ゼミへの参加を必修としない大学・学部も存在します。いずれにしろ、この「ゼミこそが大学での探求の核心中の核心」なのです。

 もちろん文献を読み、発表をし、論文にまとめる(理系ならばここに実験、演習が加わります)以上、ゼミ型講義への適応には、個々の学生の読書歴が重い意味を持ちます。この意味だけであっても、読書習慣がないまま大学に入学することは危険で、かつ自らの学部、学科に即した攻撃的読書をしていない高校生は、大学での探求型の学びに遅れ、自らの成長のきっかけを得ることがないまま学生生活を終えてしまうリスクを抱えてしまうことになります。

 敢えて言えば、読書、それも「大学での探求型の学びに適応するための攻撃的読書こそが極めて重要」なのです。そしてその具体的な方法については次回、しっかりと紹介したいと思います。

プロフィール
河本敏浩(かわもと・としひろ)
(社)全国学力研究会理事長、思考計画(株)代表取締役。1967年生まれ。同志社大学文学研究科新聞学専攻修士課程修了。予備校講師を経て教育コンサルタント会社を起業。年間100回以上の講座・講演を全国の高校などで行っている。著書に『名ばかり大学生』など。