大学チャンネル.com » 2013年7月1日アップ » “不本意入学”はチャレンジの証。 第一志望に落ちてから、 俺の本当の受験が始まった

コラム

今村亮の誌上“カタリバ” 大学生×高校生 自分の未来は自分でつくる!

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“不本意入学”はチャレンジの証。 第一志望に落ちてから、 俺の本当の受験が始まった

高校生の皆さんは、「カタリバ」というNPOを聞いたことがあるだろうか?

新宿駅からJRで5分、高円寺駅を降りていただくと、中央線の高架下が怪しい商店街になっているのがわかると思う。異国のお香の匂いがするアジア衣料店や、なぜか昼からにぎわう焼鳥屋や、奇妙な音楽が漏れ聞こえるライブハウスがひしめく薄暗い通り沿いに、NPOカタリバの事務所はある。

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 対話のキャリア学習プログラム「カタリ場」を、全国140高校へ届けています。親でもなく先生でもない、少し年上の先輩との「ナナメの関係」は進路を考えるきっかけにつながります。
認定特定非営利活動法人NPOカタリバ 

 「秘密基地みたいだね」と、皆は言う。カタリバ東京事務所には夕方になると毎日、授業や就活やアルバイトを終えた大学生たちが集まってくる。数えてみると、年間のべ3,000人以上の大学生がここに訪れている。すごい数だ。3分おきに頭上を中央線の電車がガタゴト通り抜けるカタリバ東京事務所は、いつも熱気に満ちている。

 この秘密基地から学校に未来を届けるのが、僕たちのミッションだ。NPOカタリバは、大学生を中心とするボランティアスタッフと高校生が等身大のまま語り合う出張授業を、北は北海道から南は沖縄まで全国140高校で実施している。もしかしたらあなたの高校にも、カタリバは訪れるかもしれない。

 このコラムは、カタリバの熱気や大学生のリアルを、少しでも高校生の皆さんにお届けしたいと思って書いている。冷めないうちに読んでください。

 「自分は山梨県出身の大学3年生です。実は高校3年の冬、一般入試で地元の国公立大に落ちて、正直すべてがどうでもよくなった時期があった」

 高校時代をそう振り返るのは、大学生スタッフ・たくみー。

 「世界が真っ暗になった。やりたいこともわからなくなったし、勉強のモチベーションは一気に下がった。そもそも第一志望に絞っていたから、他の大学の情報をまったく知らなかった。しかも時間がないから焦るじゃないですか。寒い進路指導室で赤本をめくりながら、俺はボロボロ泣いたよ」

 当然だが、受験生全員が第一志望に合格することはない。「不本意入学」といって、努力が実らず、本来は志望していなかった進路を選ぶ者もいる。たくみーはそんな自分のリアルを伝えるためにカタリバに参加するようになった。高校生に自分と同じ後悔を繰り返してほしくない。それがたくみーの想いである。

 「どうしようもない自分を救ってくれたのは担任の先生でした。先生は落ち込んでいた俺に声をかけてくれて、黙って話を聴いてくれた。そのとき、“どうしても教師になりたい”という気持ちが言葉になってあふれてきた。受験に失敗して忘れそうになっていた想いだった。自分で選んだ道を自分は進みたい。そう話した俺に、先生はある私立大学を薦めてくれました。一応、名前は知っているけれど、どこにあるかもわからないような大学だった。でも、少し楽になったような気がして、俺は猛勉強を始めた。もう一度、大学研究も始めた」

 あれから二年。その大学に今、たくみーは通っている。確かに第一志望ではなかったかもしれない。だからこそ、この選択を後悔しないですむように、彼が大学生活で思いっきりチャレンジを重ねていることを僕は知っている。たくみーはきっと良い先生になるだろう。

 実は難関大学ほど、「自分は不本意入学だ」と思っている大学生が多い。なぜなら、さらに厳しい超難関大学にチャレンジしたけれど届かなかった学生が、結果的に集まるのが難関大学だからだ。不本意入学はチャレンジの証。たくみーは高校生にいつもこう語っている。

「チャレンジから逃げなかった経験が、次のチャレンジに踏み切る自信になる。目の前の壁から逃げないでほしい」

プロフィール
今村 亮(いまむら・りょう) 認定NPO法人カタリバ 統括ディレクター。 1982年熊本市生まれ。東京都立大学人文学部社会学科卒業。学生時代からNPOカタリバの事業立ち上げに参画。熊本大学非常勤講師、慶應義塾大学非常勤講師、SFC研究所所員(訪問)。 Twitter:@ryo_imamura