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第1回 隠岐島前高校 魅力化プロジェクトの事例

 今、隠岐島前にある島根県立隠岐島前高等学校(島前高校)の魅力化プロジェクトに注目が集まっている。
 このプロジェクトは、島前高校、島前3町村、島根県が協働し、魅力ある学校づくりからの持続可能な地域づくりを目指す取り組みで、地域資源を活かした教育カリキュラムの導入や、高校と地域の連携型公営塾「隠岐國学習センター」の開設、全国から多彩な意欲・能力ある生徒を募集する「島留学」など独自の施策が行われている。
 この高校への入学を希望する生徒数も増え続け、平成23年度には過疎地の学校としては異例の学級増を実現。少子化で生徒数の減少に悩む学校や将来の地域リーダーの育成に取り組みたい自治体のモデルとして、全国からの視察が絶えない。

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隠岐島前の概要

 島根県沿岸から北へ60km、日本海に浮かぶ隠岐諸島の中の3つの島――西ノ島町(にしのしまちょう)、海士町(あまちょう)、知夫村(ちぶむら)――を隠岐島前(おきどうぜん)と呼ぶ。
 この島前地域の唯一の高校が、島前高校である。

 高度成長時代、島の若者の多くは進学・就職のために都市部へ流出した。
 20~30代は減り、50年前には14,000人を超えていた島前地域の人口も、平成20年頃には約6,000人程度と半分以下になっていた。高齢化率は約40%で、若者が少ないがために生まれる子どもの数も少なく、平均出生数も年30人程度という超少子高齢地域である。

プロジェクト発足の背景

 今まで島前地域では、中学卒業と同時に生徒の半分近くが島を離れて本土の高校へ進学していた。特に経済的に多少ゆとりがあり、大学進学を希望する家庭の子どもほど、本土の高校へ出て行く傾向にあった。「島を出れば可能性は広がる」「本土に行けば未来は拓ける」という希望を胸に。

 その一方、こうした島外の高校への進学と少子化の進行により、平成10年頃には70 人程度いた島前高校の入学者数が平成20 年度には半分以下の28人に激減し、統廃合の危機に直面することになった。

 島前高校を失うことは島前3町村にとって文化的・経済的に計り知れない損失となる。高校がなくなれば、島の子どもたちは、中学卒業とともに島を離れなければならなくなり、島から15~18歳の若者はいなくなる。また、子どもが島外の高校に通うと、仕送り等(3年間1人の子どもを本土の高校に通わせると450万円程度の負担)により家計は圧迫されるため、経済的にゆとりがない家庭や、子どもの数が多い家庭の島外流出も進行することになる。さらに、子どもを持つ若年世帯層の島へのUIターンは激減し、教育費の負担増により出生率も低下する。

 つまり、「新たな雇用創出と教育・子育て支援の充実により、若者のUIターンや出生数を増やし、持続可能なまちづくりを進める」という島の生き残りをかけた挑戦は、地域から高校がなくなることで水泡に帰すことになる。この島において、高校の存続は地域の存続と直結する問題なのである。

プロジェクトの発足

 こうした学校と地域の危機に対して、「ピンチは変革と飛躍へのチャンス」という考え方に立ち、子どもが「行きたい」、親が「行かせたい」、地域住民が「この学校を活かしていきたい」と思うような魅力ある高校づくりを通して、魅力ある持続可能な地域づくりを目指す「島前高校魅力化プロジェクト」が始まった。

 このプロジェクトは、島の人づくりにおけるレバレッジポイント(1点を変えることで、全体に多大な影響を与える重要ポイント)であるため、町はこの取り組みを強く後押ししている。

 次回は、具体的にどのような行動に出てきたかをお伝えしたい。

プロフィール
藤岡 慎二(ふじおか・しんじ)
(株)GGC代表取締役。1975年生まれ。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。全国の教育機関で講義を行い、教育のシステム開発にも参画。行政と恊働して教育を通じた地域活性化にも取り組んでいる。島根県立隠岐島前高校魅力化プロジェクト教育ディレクター。