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コラム

藤岡慎二の先端社会に挑む辺境から見つめる希望の国

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第2回 プロジェクトの具体的な取り組み内容

隠岐島前高校魅力化プロジェクトの事例̶

 前回は、隠岐島前(どうぜん)高校魅力化プロジェクトに至る経緯や概要に関してお話しした。
 今回は具体的な取り組みの一部に関してお伝えしたい。

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島前3 町村でチームを発足

 まず、高校と島前3町村の町村長、議長、教育長、中学校長らによる高校改革の推進母体「島前高校魅力化の会」を発足。この会の下部組織に、教員と行政、保護者、住民等による学校の改革構想を策定するワーキンググループを結成した。そして、島内全地区を回り高校の状況やコミュニティーにおける学校の存在意義を説明するとともに、学校や教育への期待や要望を聴き、地域内での魅力ある学校づくりへの意識共有を行った。また、島内の中学と高校の生徒・保護者・教員へのヒアリングやアンケート結果をもとに、議会との意見交換会や、県・国との協議を重ね、一年かけて島前高校の今後のビジョンと戦略を策定し、その構想を島前3町村長と高校校長が合同で、県知事と県教育長に提言した。
 そして、高校の教職員と島前地域の民間事業者、ボランティア団体代表、地域住民有志などによる構想実現への推進協議会を立ち上げるとともに、県立高校内に町雇用で地元出身の社会教育主事や都市部出身の民間企業経験者を学校と地域を結ぶコーディネーターとして常駐させ、学校と地域の協働による高校魅力化プロジェクトが本格始動した。

地域の未来をつくる人材の育成

 島前高校の卒業生の95%以上の生徒は進学や就職で本土に出ていき、その中で将来島に帰ってくる割合(Uターン率)は約3割であった。今後の島前地域の自立存続を考えると、このUターン率を上げていくことが重要課題である。
 島を出た人に「地元に帰らない(帰れない)理由」を尋ねると、多くが「帰りたくても田舎には仕事がない」「働く場所がない」と答える。
 しかし、第一次産業をはじめとした地域の既存産業は衰退し、国や県からの公共事業も縮減していっている中においては、仕事や働く場所を誰かが用意してくれるのを待っていたら、地域はなくなってしまう。そのため、この地域の人づくりが目指すべきは、「仕事がないから帰れない」から「仕事をつくりに帰りたい」への意識の転換である。
 「田舎には何もない」「都会が良い」という偏った価値観から脱却し、地域への誇りと愛着を育むことに加え、「田舎には仕事がないから帰れない」という従来の意識から「自分のまちを元気にする新しい仕事をつくりに島に帰りたい」といった地域起業家的な精神を持った若者の育成を目標とした。
 島の文化を継承し、こうした地域で新たな事業や産業を生み出していける人財を育てることは、地域唯一の学校としての任務である。
 しかし、当時は中学校までは各島で地域と連携した「ふるさと教育」が行われていたが、肝心な進路を決める高校段階においては地域と関わる教育はほとんど行われていなかった。そこで、島前高校では小中学校で行われてきたふるさと教育を更に発展させた、地域に根ざしたキャリア教育を展開した。

 小規模校であるため教員数は少ないが、地域資源が豊富でソーシャルキャピタル(社会関係資本)も高いという島の地域特性を活かし、「島全体が学校」「地域の人も先生」というコンセプトのもと、「教室で教師と教科書による学習」に留まらず、「現場で多様な人との交流、体験、実践からの学習」を導入。
 生徒たちが実際のまちづくりや商品開発などを行うことで、創造力・主体性・コミュニケーション能力など地域社会で活躍するための総合的な人間力を磨くカリキュラムを柱に、地域の未来を切り拓く人材を育てる「地域創造コース」を新設した。
 例えば、そのコースの中で週3時間行われる「地域学」という科目は、地域内外のエキスパートの協力を得ながら、生徒それぞれの興味に応じてプロジェクトチームを組み、実際の地域の課題解決に取り組む授業である。
 平成23年度は「船とバスのダイヤ改正を通じた住民の利便性の向上」や「子どもも楽しめる島前の新たなパンフレット作成」等のテーマに生徒が挑戦し、実際にダイヤ改正や新たな島前マップの作成(ガイドブックの一部として販売)などを実現している。

プロフィール
藤岡 慎二(ふじおか・しんじ)
(株)GGC代表取締役。1975年生まれ。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。全国の教育機関で講義を行い、教育のシステム開発にも参画。行政と恊働して教育を通じた地域活性化にも取り組んでいる。島根県立隠岐島前高校魅力化プロジェクト教育ディレクター。