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グローバルを目指す大学

グローバルを目指す大学
急速にグローバル化する社会で、意欲的に活躍できる人材が求められている今、「グローバル人材の育成」は大学教育の重要なテーマにもなっている。
とはいえ、注目を集める“グローバル”という言葉には、多様な解釈を許してしまう側面があることも確か。果たして、“グローバルを目指す大学”とは?

グローバル化に対応するためのスキルを磨くチャンスを提供

社会のグローバル化は否応なく進んでいるにもかかわらず、若い世代の「内向き志向」が強くなっている傾向が見られ、このままでは、特に産業の国際競争力が低下して、経済的基盤の維持が難しい。そうした危機感を背景に、国を挙げた「グローバル人材の育成」が叫ばれている。

文部科学省は2012(平成24)年4月、国内大学もしくは学内のグローバル化を先導する「取組」への重点的な財政支援を目的として、各国公私立大学長宛に「グローバル人材育成推進事業」を公募。152件(129校)の申請が審査された結果、全学推進型(タイプA)11件(11校)、特色型(タイプB)31件(31校)が採択された。

全学推進型はもちろんのこと、特色型に採択された大学の取組学部や代表部局は実に多彩。外国語学部や、国際、グローバルを冠した名称の学部のみならず、5頁の表のように文理を問わない幅広い分野を網羅している。従来の「文系→語学(英語)に強い人が多い→国際化に親和的」、「理系→英語は苦手な傾向→専門分野に強ければ問題ない」などというイメージを払拭させるほど、あらゆる分野で国際化が迫られていると言えるのかもしれない。

数年前から、グローバル化戦略の一環として、日本国内にあっても英語を社内公用語にする企業が現れ始めた。また、外国人留学生の積極採用を打ち出す企業が増えつつある中で、就職活動のライバルは日本人とは限らない(多国籍の学生たち)ということも珍しくない。「内向き志向」で海外に出ようとしない若者も、国内にとどまっていても直面せざるを得ないグローバルな状況と、決して無関係ではいられないはずだ。

今、大学教育に期待されているのは、特定の学部の「意識の高い学生をエリートとしてグローバル人材に育てる」ことだけでなく、全学的なグローバル環境を整え、「より多くの学生に、グローバル化に対応するために必要なスキルを磨くチャンスを提供する」ことと言えるだろう。

グローバル人材に求められる教養として重視されるもの

文部科学省「産官学によるグローバル人材育成推進会議」は、グローバル人材に必要な3要素として、「語学力・コミュニケーション能力」「主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感」「異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー」を挙げている。語学力を除けば、“グローバル人材”に限らず、“望ましい社会人”に期待される素養の列挙とも思える。 一方、経済産業省は2006年、大学教育の中で育成すべき「社会人基礎力」を「前に踏み出す力(アクション):主体性、働きかけ力、実行力」「考え抜く力(シンキング):課題発見力、計画力、創造力」「チームで働く力(チーム力):発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力」の3つの能力、12の能力要素を定義づけた。

 つまり、グローバル人材に必要な素養とは、「日本人として世界に対峙し、多様な文化的背景を持つ人々への理解に努めながら、円滑なコミュニケーションに必要な語学力を鍛えた、国内外を問わずに通用する社会人基礎力」とも考えられる。

高等教育において身につけるべき教養の中身も、国際性、国際化への対応力といった要素が重視され、この10年の間に、「国際(グローバル)教養」の名を冠した大学、学部・学科が目につくようになった。

対象は、海外で高校教育を受けた帰国生(国内のインターナショナルスクール卒業生を含むケースも)が中心だが、秋(9月)入学の導入も増えつつある。また、日本のキャンパスで、さまざまな国籍の学生とともに、全て英語で行われる授業を受けて学位が取得できる学部・学科やコースも増え、諸要件を満たせば、所属学部と交換留学先の大学の双方の学位(ダブルディグリー)が取得可能という場合もある。

文部科学省 平成24年度「グローバル人材育成推進事業」

【事業の概要】若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図るべく、大学教育のグローバル化を目的とした体制整備を推進する事業に対して重点的に財政支援することを目的としている。129校からの152件の申請が審査され、42件〔42校〕(採択率約27.6%)が採択された。

[タイプA(全学推進型)]
大学全体でその達成を目指す取組を対象。採択大学は、国内大学のグローバル化を先導する大学として、他の大学のグローバル化推進に貢献する取組の実施が求められる。

[タイプB(特色型)]
本構想の対象となる学部・研究科等でその達成を目指す取組を対象。採択大学は、学内のグローバル化を先導する部局以外の他の学部・研究科等を含めた大学全体のグローバル化推進に貢献する取組の実施が求められる。

文部科学省 平成24年度「グローバル人材育成推進事業」
に採択された首都圏の大学
文部科学省 平成24年度「グローバル人材育成推進事業」に採択された首都圏の大学
首都圏の主要大学に設置された国際・グローバル系の学部の動向
首都圏の主要大学に設置された国際・グローバル系の学部の動向
秋入学を実施している首都圏の大学の例 ※秋入学の対象が外国人留学生のみの場合を除く
秋入学を実施している首都圏の大学の例

世界基準を目指した密度の濃いプログラム

2004年設立の早稲田大学国際教養学部がカリキュラムの特徴として掲げるのは「考える力を養うリベラルアーツ教育」「多様な文化が融合する国際的な環境」「少人数教育と充実した教育サポート」「グローバル化に対応した語学教育」「1年間の海外留学が必修」「英語『で』学ぶ力を強化する教育プログラム」。そして、全ての授業を英語によって、徹底した少人数教育の下で行い、「幅広い教養教育と世界中の学生との交流を通して、世界規模の問題に意欲的に取り組む高い志と倫理観、国際競争力、そして人間的魅力を備えた世界へ羽ばたく地球市民を育てます」という。

国際・グローバル教育への取り組みでは、「語学(英語)力の徹底強化」「留学プログラムの充実」「積極的な留学生の受け入れ」「教員のグローバル化」「学内の国際交流スペースの整備」「国際インターンシップ・ボランティアへの支援」などが多く見られ、さまざまな大学で、少人数制のリベラルアーツ教育をベースに、密度の濃い、世界基準を目指した特色あるプログラムが試みられている。

グローバル化する社会を生き抜くために重要なスキルの一つとなる語学力の養成についても、各大学で多様な取り組みが行われている。玉川大学では、英語を母語としない者(ノンネイティブ)同士が、コミュニケーションのための共通語(リンガ・フランカ=Lingua Franca)として英語を使いこなすための「ELF(English as a Lingua Franca)プログラム」を全学的に導入。明治学院大学の新しい語学教育のシステムは、母語である日本語の正しい理解と運用、英語の習得に加え、さらに1言語の習得を目指すもの。国際基督教大学では、4月入学生全員がリベラルアーツ英語プログラムで集中的に英語的思考を身につけ、9月入学生(帰国生)は日本語教育プログラムで大学レベルの日本語能力達成を目指す。

キャリア教育、国際化教育とも重なるグローバル人材育成

欧米ではスタンダードとなっているリベラルアーツ教育を、日本語と英語をキャンパスの公用語とするバイリンガリズムの下で行い、日本で最初に「国際」の名を冠した4年制教養学部大学、国際基督教大学が設立されたのは1953年。そして1969年、津田塾大学学芸学部に日本の大学初の国際関係学科が設置された。

その後、学部・学科の名称に「国際」「国際関係」が使われるようになったのは、1970年代の終わり頃から。以後、1980年代後半から2000年代半ば頃まで、新しい学部・学科(あるいは大学)の名称に“国際の2文字を加える”ことがブームのようになっていた時期も含めて、国際系の学部・学科は数を増やし続けてきた。そして2000年代半ば頃から現れ始めたのが「グローバル」の名称。しかし、「国際」と「グローバル」の使い分けは決して厳密ではなく、イメージでとらえられている側面も強い。

よく言われるのは、「国家の枠組みを前提に、国境をはさんで〈平面的に〉交流が行われることが国際化(=internationalization)」で、「国境の定義があいまいになり、物事が地球規模で〈立体的に〉動くことがグローバル化(=globalization)」だということ。国際化は互いの努力なしに進展しないが、人、物、金、情報が容易に国境を越えて移動する現代社会で、特に経済のグローバル化は著しい。産官学が一体となって進められるグローバル人材育成は、キャリア教育、国際化教育とも重なるものになっていると言えるだろう。

英語による授業のみで学位取得可能な学部を置く首都圏の大学の例
英語による授業のみで学位取得可能な学部を置く首都圏の大学の例